love letter from silenthill 02
カナダに行こうと思って見たところで16歳の僕でも気軽に行けない場所だと分かっていた。
パスポートの期限は大丈夫。
時期は冬休み。
そこはオッケィ。
問題はお金だった。
「デートしに行くからカナダまでの往復チケット代頂戴」なんて父親に言える訳もないのでアルバイトをすることに。
アルバイトの経験はというと郵便局で年賀状の区分けをしたくらいなもんなので、近場で夏休みの短期間にガッツリ稼ぐことにした。
そのアルバイトというのがガソリンスタンドだった。
控え目に言って僕は運動が得意な方ではないのでこれがまたキツかった。
真夏の真昼に真剣な顔をして走り回る。
汗だくになりながらフロントガラスを拭く。
ガソリンがぶっかかりながらタイヤの空気圧をチェックする。
楽しかった思い出は2つある。
1つは少しずつ軽油の車のエンジンの音が分かってきたことと、
もう1つは夕立が降ってきて水たまりにガソリンが垂れた波紋が綺麗だったこと。
夏も終わり
アルバイトも終わり
日程も決めた。
1月1日の前後1週間
2週間滞在することにした。
だから多分出発したのが…あれ
12月22日くらいに現地に居たから
出発したのが…21日とか?
あれ
じゃあ12月21日くらいに出発した。
真冬のカナダに行くんだからと気合いを入れてコートを新調する事もせず
「ハートが温かいから大丈夫」とアホな考えで成田空港に着いた。
一人で飛行機に乗る事も海外へ行く事も初めてだったのでそれなりに緊張をした。
飛行機はカナダの航空会社。
キャビンアテンダントはみんなキャシーベイツみたいなおばちゃんばかりで益々心細くなった。
食事の時間になるとキャシーベイツは僕の所に来てミザリーにするかタイタニックにするか…では無く食事の選択肢をせまった。
よくわからなかったので最初に言われた方にすると次に当たり前のようにワインは赤か白を聞いてきた。
「おいおい、これがアメリカンジョークなのか」と思ったけどカナダだし何より未成年だったので水をもらった。
飛行機の羽根も無事にカナダに到着。
10時間くらいかかったのかな。
空港で彼女とその家族に見つけてもらう。
これからしばらくこの人たちと生活を共にする。
彼らの家はカナダのロンドンという場所にあった。
「ロンドンに住んでいる」と言われた僕は2.3回世界地図を確認してしまった。
ロンドンはあの有名な五大湖の近くの街。
ざっくり五大湖の近くと言ったけど5つのうち何湖の近くだったかは今更世界地図を見るのは面倒なので見ない。
ミシガン、オンタリオ、スペリオル、エリー、ヒューガン?
確かそんな名前だったよね。
だからそのどれかの近く。
ロンドン。
ロンドンの家はとても広く、爬虫類がその辺を歩いて生活をできるくらい暖房が効いていて暑いくらいだった。
僕は来客用の部屋を借りて荷物を置いた。
勝手な想像だったけどリビングのソファとかで寝るのかと思っていた。
地下室もあり彼女の弟がアイスホッケーの練習をするためのスペースまであった。
前半のロンドンでの生活はと言うと
近くの湖のそばのお店でハンバーガーを食べたり
モールでJEWELのCDを買ったり
美容院で髪を切ったり
その髪型が変だと言われ家で手直しされたらマッシュルームカットみたいになった。
帰国した僕のあだ名は「マッシュ」だったり後輩からは「マッシュ先輩」と言われるようになる。
ロンドン。
数日が過ぎ僕と彼女とその家族と親戚夫婦みんなで車に乗って旅行をすることになった。
変だよね。
僕は旅行中なのに。
次回はそこから。