神戸へ
大阪に生まれて2歳くらいまで居たけど
お隣のよく分からない場所
神戸県
高校一年生の夏休み
僕は神戸へ向かった。
三宮駅近くでセリさんと待ち合わせる。
相手の容姿もこちらの容姿も分からないまま待ち合わせるのは難しいと思われたが、
当時ナウなヤングにバカウケなPHSを持っていたのですぐに出会えた。
一言で言うとセリさんは大人の女性で僕は控え目に言ってもクソガキだった。
15歳と28歳の男女が一緒に歩いているというのは当の本人である僕が一番不思議に思った。
セリさんの印象に残っているものと言えばまずはスカート。
今でも鮮明に覚えているタイトでピンクの花柄のスカート。
あまりに印象的だったので他の記憶があやふやだ。
もしかしたら上半身なんて裸だったんじゃないかというくらいに。
僕はまず布引ハーブ園へリードされた。
そう、なんというかリードされた。
僕は犬でその散歩に連れて来てもらっているような感覚だった。
「見て見て!ご主人様!たくさん綺麗なお花が咲いているよ!」
ワンワン。
散歩も終わり夕方になる頃、セリさんは晩御飯を食べに行こうと言った。
「神戸での事は全て任せて」と言われたので本当になすがままだった。
「これが大人のデートか…。」と僕は馬鹿正直にリードで繋がれたまま従った。
それがとても楽しかった。
晩御飯を食べるお店は予約されてあり、コンビニに入るくらい自然にセリさんはいって行った。
イタリア料理のお店。
テーブルに向かいあって座る姿は緊張している弟くらいの感じには見えたかもしれないけれど、
僕はこの時わけがわからないくらいに緊張していた。
イタリアンのコースなんて初めてだったし、野菜嫌いで過保護に育てられた僕はナスを食べるのも初めてだった。
今日一番カッコつけたのがナスを食べるときだった。
前菜のナスやらサラダを食べ終わるとパスタがきた。
無駄に大きいお皿をしばらく眺めていたらセリさんが笑ってくれた。
パスタを食べながらセリさんは自分の話を少ししてくれた。
医療関係の仕事をしていること、彼氏がいること。
「彼氏がいるのに僕と遊んでいいんですか?」そう聞くと
「大丈夫。じゅんくんは弟みたいなもんだから」と笑われた。
犬から弟に立派な進化。
パスタを食べ終わる頃、メインの肉料理が来た。
パスタで終わりだと思っていた僕はちょっとビックリした。
ラム肉だったか牛肉だったかもしかしたら犬肉かもしれない。
肉料理を食べながらセリさんはグラスの赤ワインを頼んだ。
「一口飲んでみる?」と聞かれて
「未成年ですよ?」というより
「え、彼氏いるのに?」と思いながら一口貰った。
初めて飲む赤ワインは錆びたファンタグレープのような味の印象でリアクションに困った。
「大人はきっとこれを美味しいと思えるんだ。僕が大人になる頃セリさんはまた僕と一緒に赤ワインを飲んでくれるだろうか」
一口で酔っ払った僕は帰りのタクシーの中でそんな事を考えていた。
宿泊先であるワシントンホテル。
シャワーを浴びた僕は一人
部屋でテレビをつけると神戸で銃撃戦があった事を知る。