水族館の夜

書きたいことを書いていきますよ。

猫アレルギー

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僕は何かを例える時にしばしば柴犬を用いる。

「柴犬くらいの重さ」

「柴犬のような匂い」

「柴犬のような笑顔」

それくらい柴犬が好きだし犬か猫かと聞かれたら犬派だ。


ただ柴犬と暮らしたのは一年くらいしかない

「ギン」と名付けた柴犬。

あれはなんだったのだろう。


次に犬と暮らしたのはシーズー

名前は「ポヨン」と「マリモ」

ポヨンは僕に凄く懐いていたし僕もまたポヨンに懐いていた。


そんな犬の人生なわけで猫のネの字も入る余地がなかった。


初めて猫に触れたのは友人の彼女の猫だった。

とても怖かったけど触りたい衝動に駆られ触る。

止まらないくしゃみ、赤く腫れて痒くなる目。

猫アレルギーを予感した。


それから数年後、僕はハワイアンカフェで働いていた。

テラス席もあるこじんまりとしたお店。

そこで僕は毎日料理を作るのをメインにウェイターもやった。

まともに調理をする仕事は初めてなのでとても楽しかった。

BGMがひたすらハワイアンなのを除いて。


そのお店で働いているある日のこと

テラス席に毎日愛犬との散歩で立ち寄るお客さんからこんな話を持ちかけられた。

「猫を飼えないか?」と

僕はどちらかというと猫が怖いくらいだったけど、どうして僕なのか聞いてみた。

一人暮らしだしペット可の家だからとそれだけの理由だった。

話を続けているとその猫はロシアンブルーだった。

お客さんの知り合いの韓国人留学生が国に帰るから飼えなくなって引き取っていると言った。

そのお客さんは犬を飼っているので猫は一緒に飼えないとも言った。

他に頼める人もいなく僕が引き取らないとどうなるか考えたくもなかった。

「僕に下さい」

すぐに返事をしてしまった。


それから数日後、お客さんとその猫が家に来た。

何故かお客さんのお子さんも来てしばしうつむいていた。

猫と離れたくないらしい。

おいおい、勘弁してくれよ。

引き取った物は


猫本体

結束バンドで雑に繫ぎとめられたゲージ

動物用キャリーバッグ

猫お気に入りのクッション

猫お気に入りの爪とぎ

韓国人の写真

血統書のコピー


血統書のコピー…?

見るとそこには「ミャーの母親」とペンで記入されていた。

あー、この猫はミャーって呼ばれていたんだ。

ミャーの母親の血統書であってミャーの血統書では無いんだなと思った。

ミャーはだいたい生後1年半らしい。

詳しい生年月日は不明。


生年月日もよくわからないミャーとその付属品たちを置いてお客さんとそのお子さんは帰った。

帰り際お子さんが僕に猫の飼い方の本をプレゼントしてくれた。

プレゼントという割にはじっくり読み込まれたその本を見てなんとも言えない気持ちになった。

しかしこれからはこのミャーと暮らしていくのは僕なのだ。

静かな家の中で怯えているミャーを横目に本を読んだ。

そして夜が明けた。


これからミャーの新しい生活の始まり。

まず僕がした事と言えば名前と生年月日の設定だった。

ミャーと話しかけても知らんぷりをするので自分が呼びやすく気にいる名前をつけた。

大好きなBLAME!という漫画に出てくるヒロインの名前がCIBOだったのでCIBOにした。

誕生日は2006年の6月9日にした。

6月9日というのはMUSEのマシュー、ナタリーポートマン、マイケルJフォックス、ジョニーデップの誕生日だったからだ。


子猫が来たわけでは無い。

子猫と言うにはボリュームのある、しなやかなそのCIBOは見るからに美しかった。


CIBOは家に来てから数日ずっと血便をしていた。

動物病院で診てもらうと環境の変化によるストレスと診断された。

そりゃそうだ。


CIBOと暮らし始めて数日が過ぎる頃の朝、

CIBOの姿が見えなかった。

3LDKに一人暮らしという無駄に広い家の中をひたすら探した。

みつからない。

焦る僕は外に出て数時間は探したと思う。

それでも見つからず家に帰り、喉が渇いたので冷蔵庫を開けてお茶を飲む。

冷蔵庫が開くと中の温度が上がり冷蔵庫のコンプレッサーが動きだす。

すると冷蔵庫の裏からCIBOのかぼそい鳴き声が聞こえた。

冷蔵庫の裏に入り込んでしまい出られなくなっていたのだ。

ホッとしたと同時にCIBOには首輪が無い事に気がつく。


休みの日、吉祥寺のユザワヤへ行き首輪の材料を探した。

布、留め具、そして鈴。

市販の首輪はグッと来るものがなく自分でつくることに。

それから数年の間は何個かCIBOの首輪を作った。


CIBOとの生活も数週間が過ぎ、お互いにアレルギー反応が出ないことに気がついた。

ずっとCIBOの事を考えていた僕は、和室に置く盆栽の事を思い出した。

ミニチュアサイズの盆栽を前から置きたかったので近所にある大きな園芸洋品店へ行った。

様々な品種、形、植木鉢をした盆栽たちをじっくり見極めて購入した。

家に帰り和室に置くととても満足した。

これがやりたかったのだ。


ほんの5分くらいの間だったと思う。

台所で調理をしているとやけにCIBOが静かなのでCIBOがいた和室を覗いてみた。

僕が2時間くらいじっくり選んだ盆栽の葉っぱが全てCIBOによって食べられていた。

被害者ヅラして食べた葉っぱをゲーゲーと吐いているCIBOを見て

僕はまた猫アレルギーになるかと思った。